
「加工時間の計算をExcelでやっていたけど、
もっと簡単に計算できるソフトがあれば…」



「おすすめの加工時間計算ソフトがあれば知りたい…」
多くの製造業では、加工時間の計算をExcelで行っています。しかし、関数やマクロの知識が必要だったり、入力ミスが起きやすかったりと、Excelでの計算に限界を感じている方も多いのではないでしょうか。また、計算方法が属人化してしまい、新人の教育に時間がかかるという課題も耳にします。
そこでこの記事では、加工時間の計算をExcelから計算ソフトに切り替えるメリットや、具体的なソフトの選び方、そしておすすめの加工時間計算ソフトを5つ厳選してご紹介します。
この記事を読み終える頃には、Excelを使わなくても、誰でも迅速かつ正確に加工時間を算出できる仕組みを構築することができるはずです。
そもそも加工時間の計算が重要な理由とは?
おすすめのソフトを紹介する前に、なぜ「加工時間」を正確に計算することが、これほどまでに重要なのでしょうか。その理由は、大きく3つあります。
- 正確な見積もりによる信頼性の向上
- 生産計画の精度向上と納期遵守
- 適正な製造コストの算出
1つずつ解説していきます。
正確な見積もりによる信頼性の向上
顧客に提出する見積もりの根幹となるのが、加工時間です。加工時間が正確に算出できれば、部品の単価を的確に設定でき、精度の高い見積書を作成できます。迅速で正確な見積もりは、顧客からの信頼獲得に直結する重要な要素なのです。
生産計画の精度向上と納期遵守
加工時間は、生産スケジュールを立てる上での基礎となります。一つひとつの部品にかかる時間を正確に把握することで、工場全体の生産計画の精度が向上し、無理のないスケジュール管理が可能になります。これは、顧客への納期を確実に守るためにも不可欠です。
適正な製造コストの算出
加工時間は、材料費や人件費と並んで、製造コストを構成する大きな要素です。加工時間を短縮できれば、それだけ機械の稼働コストや人件費を抑えることができます。自社の製造コストを正確に把握し、利益を最大化するためにも、加工時間の計算は欠かせないのです。
加工時間の主な計算方法と基本の計算式
加工時間計算ソフトがいかに便利かを理解するために、まずは代表的な切削加工の計算方法を知っておきましょう。ここでは特に検索されることの多い「旋盤」と「エンドミル」の計算式をご紹介します。
切削加工時間 計算の基本
「切削加工」とは、刃物で材料を削り、目的の形状に仕上げる加工方法の総称です。加工時間は、基本的に「工具が削り進む距離」を「工具が進む速さ」で割ることで求められます。
ただし、この「速さ」の計算が加工方法によって異なるため、それぞれに特化した計算式が必要になります。
旋盤 加工時間 計算
旋盤加工は、円筒状の材料を回転させ、そこに刃物を当てて削る加工方法です。加工時間は、主に以下の計算式で求められます。
加工時間(分) = 加工長(mm) ÷ (主軸回転数(rpm) × 一回転あたりの送り量(mm/rev))
- 加工長: 刃物が材料に接触して削り進む距離
- 主軸回転数: 材料が1分間に回転する回数
- 一回転あたりの送り量: 材料が1回転する間に刃物が進む距離
例えば、外径を削る場合、削る長さと材料の回転数、刃物の送り速度が分かれば、加工時間を計算できます。
エンドミル 加工時間 計算
エンドミルを用いたフライス加工は、回転する工具を固定した材料に当てて削る加工方法です。平面や溝、穴など、様々な形状を作り出せます。計算式は以下の通りです。
加工時間(分) = 加工長(mm) ÷ (テーブルの送り速度(mm/min))
そして、テーブルの送り速度は、以下の式で計算します。
テーブルの送り速度(mm/min) = 刃の枚数 × 一刃あたりの送り量(mm/t) × 工具の回転数(rpm)
- 加工長: 工具が削り進む距離
- 一刃あたりの送り量: 工具の刃一枚あたりが進む距離
- 工具の回転数: 工具が1分間に回転する回数
フライス加工では、工具の刃の数や一枚あたりの送り量など、考慮すべき要素が旋盤加工よりも少し多くなります。
手計算やExcelでの計算はなぜ大変なのか?
ご紹介した計算式は、あくまで基本的なものです。実際の現場では、「アプローチ(刃物が材料に到達するまでの時間)」や「工具の交換時間」「段取り(加工の準備)時間」など、様々な要素が加わります。
一つの製品を作るのにも、複数の加工工程があれば、その都度これらの計算を繰り返さなくてはなりません。
複数の加工工程を手計算やExcelで行うことは、以下の問題が発生しがちです。
- 「計算式が複雑で、入力する項目が多くて大変…」
- 「入力ミスや計算間違いに気づきにくい」
- 「計算式やシートを作った本人しか、修正・管理ができない(属人化)」
こうした煩雑でミスの起きやすい計算作業を自動化し、誰でも正確な時間を算出できるようにしてくれるのが、次に紹介する「加工時間計算ソフト」なのです。
加工時間計算ソフトを選ぶ際の比較ポイント3選
いざ計算ソフトを導入しようと思っても、様々な種類があるため、どれを選べば良いか迷ってしまいますよね。ここでは、自社に最適なソフトウェアを選ぶために、特に重要となる3つの比較ポイントをご紹介します。
対応している加工方法
まず最初に確認すべきは、そのソフトが自社で行っている加工方法に対応しているか、という点です。
旋盤やフライス(エンドミル)加工は多くのソフトが対応していますが、マシニングセンタでの複合加工、研削加工、板金加工など、特定の加工に特化したソフトも存在します。ソフトを導入したのに、「やりたい加工の計算ができなかった」という事態を避けるためにも、対応範囲は必ず事前に確認しましょう。
操作性・UIは自社の担当者に合っているか
Excelからの移行を検討している最大の理由は「計算の手間をなくしたい」ことのはずです。せっかくソフトを導入しても、操作が複雑で覚えるのに時間がかかってしまっては本末転倒です。
特に、現場の担当者や事務員など、誰もが使う可能性がある場合、「専門知識がなくても直感的に操作できるか」は非常に重要なポイントになります。無料トライアル期間などを活用して、実際に操作感を試してみるのがおすすめです。
費用対効果
加工時間計算ソフトには、無料で利用できるWebツールから、高機能な有料のソフトウェアまで様々です。
もちろんコストは重要ですが、「安いから良い」「高いからダメ」と一概には言えません。考えるべきは「費用対効果」です。
- ソフト導入で、見積もり作成時間を月間で何時間削減できるか?
- 計算ミスによる手戻りや損失を、年間でいくら防げるか?
- 属人化が解消され、誰でも見積もりできるようになる価値は?
これらの視点から、導入コストを上回るメリットが得られるかどうかを総合的に判断することが大切です。
おすすめの加工時間計算ソフト5選│無料・有料ツールを比較
ここからは、数ある計算ソフトの中から、特におすすめの加工時間計算ソフト・ツールを5つ厳選してご紹介します。それぞれの特徴と費用を比較し、自社に最適なものを見つけてください。
SellBOT(セルボット)


特徴:
見積もりから受発注まで一元管理できるクラウドシステムの「SellBOT」です。単なる時間計算に留まらず、図面データをアップロードするだけでAIが加工時間を算出し、材料費や諸経費と合わせた詳細な見積りを作成します。専門知識がなくても使える直感的な操作性が魅力で、見積もり業務の属人化を解消し、誰でも迅速・正確な対応が可能になります。「計算の手間」と「見積り作成の手間」を同時に解決したい企業に最適です。
費用:
有料(要問い合わせ)
URL:
https://example-sellbot.com
京セラ「切削計算機」
特徴:
大手工具メーカーの京セラが提供している、Webブラウザ上で使える無料の計算ツールです。会員登録なども一切不要で、サイトにアクセスすれば誰でもすぐに利用できます。旋削、フライス、穴あけ加工といった基本的な切削計算に対応しており、「まずは手軽にソフトを試してみたい」「簡単な計算だけできれば良い」という場合に非常に便利です。
費用:
無料
URL:
https://www.kyocera.co.jp/prdct/tool/calculator/
住友電工ハードメタル「加工計算ツール」
特徴:
こちらも国内大手、住友電工ハードメタルが提供する無料のWebツールです。特に旋削加工の計算機能が充実しており、加工時間だけでなく、切削抵抗や所要動力といった、より技術的で詳細なデータまで算出できるのが強みです。エンジニアや、より専門的な数値を参考にしたい方に適しています。
費用:
無料
URL:
https://www.sumitool.com/downloads/app/calc_turning.html
Autodesk「Inventor CAM / HSM」
特徴:
3DCADの世界的リーダーであるAutodesk社が開発・提供する、プロ向けのCAMソフトウェアです。3Dモデルから加工プログラム(NCデータ)を生成する過程で、極めて高精度な加工時間シミュレーションを行います。単なる計算ツールではなく、設計から製造までのプロセス全体をデジタルで連携・効率化したい企業向けの本格的なソフトウェアです。
費用:
有料
URL:
https://www.autodesk.co.jp/products/inventor-cam/overview
NCVC
特徴:
NCプログラムのシミュレーションができる、高機能なフリーソフトです。マシニングセンタなどで使用するNCデータを読み込ませ、工具の動きをグラフィカルに確認できます。シミュレーション機能の一部として、プログラム全体の加工時間を算出する機能が搭載されており、現場でNCプログラムを扱う機会が多い企業にとって、非常に心強いツールとなるでしょう。
費用:
無料
URL:
https://www.cimple.co.jp/jp/
まとめ
本記事では、製造業における加工時間計算の重要性から、Excelでの計算が抱える課題、そしてその解決策となる計算ソフトの選び方とおすすめ5選をご紹介しました。
正確な加工時間の計算は、信頼性の高い見積もり、精度の高い生産計画、そして適正なコスト管理に不可欠です。しかし、手計算やExcelでの作業は手間がかかるだけでなく、属人化やミスの温床になりがちです。
こうした課題を解決するために、加工時間計算ソフトの導入は極めて有効な手段です。無料のツールから本格的なシステムまで様々な選択肢がありますが、以下の3つのポイントを意識して、自社に最適なものを選びましょう。
- 対応している加工方法
- 操作性の良さ
- 費用対効果
また、単なる時間計算だけでなく、見積り業務全体を効率化し、会社の仕組みを変革したいと考えているなら、「SellBOT」の導入をおすすめします。
この記事が、あなたの会社の業務効率化を前に進める一助となれば幸いです。
よくある質問(Q&A)
最後に、加工時間計算ソフトに関してよく寄せられる質問とその回答をまとめました。
Q. 無料の計算ソフトと有料のソフトの違いは何ですか?
A.
一番の違いは「機能の範囲」と「目的」です。
京セラや住友電工が提供するような無料ツールは、特定の計算を素早く行うのに特化しています。手軽に使える反面、機能は限定的です。
一方、SellBOTやInventor CAMのような有料ソフトは、時間計算だけでなく、見積り作成、データ蓄積・管理、他のシステムとの連携など、業務全体の効率化を目的とした多機能なものが多く、手厚いサポートが受けられるのも特徴です。
Q. 導入にあたって、ITの専門知識は必要ですか?
A.
一概には言えませんが、本記事で紹介したようなクラウドベースのソフト(SellBOTなど)やWebツールは、インターネットが使える環境があれば、専門知識がなくても直感的に操作できるように設計されているものがほとんどです。
ただし、CAMソフトなどは高機能な分、初期設定や操作の習熟にトレーニングが必要な場合もあります。多くのベンダーが導入サポートを提供しているので、不安な場合は事前に相談してみましょう。
Q. スマートフォンのアプリでも計算できますか?
A.
はい、「切削速度 計算 アプリ」などで検索すると、スマートフォンで利用できる計算アプリも多数見つかります。現場で手軽に数値を確かめたい、といった用途には非常に便利です。
ただし、正式な見積書の作成やデータの管理・共有といった業務で利用するには、PCで使えるソフトウェアやクラウドシステムの方が、機能面や操作性の観点から適していると言えるでしょう。